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中医の雑記中医学学習

証ってなんだ?

こんにちは、オリエンタルコスモスの中医師・伊藤岳です。
 
漢方の世界では、日本漢方・中医に限らず「証」を重要視します。「証」は字の通り証拠であり、身体の状態を表すための証拠基準と言ったところででしょう。
今回は、中医の「証」について解説をしたいと思います。
 

証の概念

 
人は、時間軸の中に生きていいます。今ここに、人生と言う名の一本軸があるとします。この一本軸のある段階のポイントで出ているのが現「証」であり、その証は時事刻々と変化が生じていきます。
 
 
診察では、あなたが持つ症状群に対して、現在どんな症状が・いつから・どのように起きているか・本来ある体質などを知る事で、「今の証」を立てていきます。

 
 
よって極端な話で言えば、今日の証と明日の証は異なる事もある。言い換えれば、漢方の内容も変化を起こすと考えられます。
 

病気の進退を探る

身体の状態においては、病気の進退や増悪、衰退が起こります。これもまた同一の時間軸で発生していきます。
 
ただし、病気の進退は身体の持つ正気の盛衰により左右されます。正気とは、人が持つ先天的・後天的な気を指し、その盛衰により邪気が体外より侵入し病を引き起こし、いわゆる免疫力と言っても憚りありません。
 
中医では、正気や気血・臓腑の盛衰、邪気の強弱と部位、過去から現在、将来的な病気の進展を推し量り、証を治療に役立てています。
 
病気の進退に関して言えば、中医には「天人合一(てんじんごういつ)の考えがあり、生活環境も大いに人体に影響を与えると考えています。
 
例えば、水の多い環境では体に湿が溜まり、水に関する症状が多いなどがあります。実は、数年前から気象と医学について論じられる事が多くなり、本なども出版されています。以前からバイオウェザーと言うサイトがあるので参考にされてみてはいかがでしょうか。
 
これらの体質・体の強弱・外的影響・感情・飲食・時間経過など要素が、証を構成します。
 

証を探る

中医で証を求める方法には、四診(ししん)があります。四診とは、望・聞・問・切の4種の診察カテゴリの事をあらわします。いづれの診察カテゴリも、診察する医師や治療者側の客観性が問われ、当然ながら脳内のバイアスつまり「思い込み」を発生しにくくするために、4つのカテゴリを取り合わせる必要があります。
 
 
「望診(ぼうしん)」は、主に視覚情報となり、精神・器質的形態・姿勢・色などの表在情報を観察します。その中でも異彩を放つ望診法は、「舌診(ぜっしん)」です。
 
舌診の方法は、「あっかんべー」と言わんばかりに舌を出してもらい、舌の色・形・潤い・苔の色・厚さ・分布状態と、舌裏の動脈の怒張を観察します。
 
いくら何でもあっかんべーの時に下まぶたは引っ張る必要は無いですが、個人的にはそれはそれでツッコミ所として余地を残しているので、ご愛嬌です。それはさておき、望診は四診でも大きなウェイトを占めます。
 
心理学でも、「メラビアンの法則」と呼ばれる法則があり、人は外見だけで6割の印象付けがなされてしまうとされる事があるくらい外見は大きな比率を持ちます。
 
よって心理作用が働き過ぎないように、診察(観察)には直感的に働かせながらも客観性を有する必要があります。その取り入れる情報の中身は、非常に膨大であり、人間の無意識が働く部分でもあるのでとても有用です。望診で身体の状態が把握出来れば、「上工」つまり高等技術者レベルの医者だとも言われています。
 
「聞診(ぶんしん)」には、2つの聞くがあり、①聴く②嗅ぐがあります。声など音質・声量を聞いたり、体臭や分泌物、排泄物のニオイを嗅ぐなどもあります。
 
「問診(もんしん)」は、現代医学よりも詳細であり、寒熱・汗・頭胸腹部・飲食・排泄・渇き・口耳の状態などの内容に止まらず、尚且つこれらを詳細化して聴いていきます。
社会的立場や環境なども加味して証を組み立てる重要な要素でもあります。
 
「切診(せっしん)」は、現代医学での触診に相当します。本当に切る訳ではなく、「切」自体の意味には、切迫のように近づくなどの意味や、さするなどの動作があるからであるので、「切」の字が当てられています。
 
特に中医で代表的なのは、「脈診(みゃくしん)」で両手の手首の脈を取り体の状態を窺うことができます。日本の漢方では、お腹を見る「腹診(ふくしん)」が有名ですが、中国では腹診を取り入れている医師は多くはありません。
 
 
以上の四診の情報を元に、帰納法的に情報を統括して証を立てます。この行為を証を分けていくことから、「弁証[辨証](べんしょう)」と呼びます。その証に合わせて治療法を講ずることを「論治(ろんち)」と呼び、「整体観念」に並び中医の中核的な思考の1つとされています。
 
中医の弁証と治療(論治)法は、刑事が犯人を捕らえるが如しです。そもそも帰納法は、多種の事象から関連することを結びつけて1つの結果にたどり着く思考法です。
 
犯人を捕らえる例では、①殺人の証拠を集める(症状を探る)。②状況証拠や物的証拠、動機などを結びつける(症状の傾向などを探る)。③犯人を見つける(主要たる病気の原因を定める)。これが犯人(証)を見つけるための方法です。
 
また、犯人を逮捕するためには、逮捕をする対策を考えてから逮捕をします。この方法論と実際が「論治」にあたります。
 
 

最後に

証の無い漢方や鍼灸治療は、治療にあらずです。鍼灸治療はまだしも、漢方薬に関しては非常に大きな意義を持ちます。

多少の細かい証のズレがはあっても、大きな道筋が立っていれば漢方薬による副作用は免れます。ましてや、ある程度の効果も見られます。

それは帰納法自体が、70%くらいの正答率で「結構この状態」という程度であれば、おおよそが成り立つためです。もちろん漢方薬を使って、どハマりするくらい効果が現れる時もあります。

ただし、見事に証を外せば「毒にも薬にもならない」むしろ「毒」になるかもとなります。

現在、漢方薬普及のため多くの医療機関でエビデンスに沿ったマニュアル化した漢方薬の処方がなされています。なるべくならば、漢方薬のことを理解した医療機関などに頼ってもらいたいものです。

 

 

 

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